課題10 細胞
すべての生物は細胞で形作られており,また細胞は“生きている”と呼べる最小単位である。生命現象は分子レベルから生態系に至るまで階層的にとらえることができるが,なかでも細胞のレベルでの生命現象の探求は非常に重要なテーマである。
この課題では,タマネギ鱗茎の表皮細胞を用いて“生きて動いている生命の営み”を直接観察する。さらに染色し,その構造を詳細に観察する。遺伝情報を担うDNA分子が,細胞内のどこに存在するのかを観察・スケッチする。
課題11 DNAによる生物の識別
親から子へと受け渡される遺伝情報は DNA に託されている。遺伝子組換え技術,DNAを構成する塩基配列の決定技術が急速に進むとともに,微量の DNA を試験管内で大量に増幅するPCR (ポリメレース連鎖反応)法が開発され,ゲノム情報の解析が可能となった。DNAの解析技術の進歩は様々な学問分野に影響を与えただけでなく,犯罪捜査や身元確認,農産物の品種開発など,社会的にも重要な役割を果たしている。
この課題では,異なる生物(ヒト,マウス,ラット,ゼブラフィッシュ)から抽出したゲノムDNAを PCR 法および電気泳動法によって調べ,“生物の違い”を“ゲノムDNAの違い”として認識する。
課題12 波の回折による物体の構造の解析
生体はさまざまな分子によって構築されている。なかでも核酸,タンパク質あるいは多糖類のような生体高分子は,生命を特徴付ける分子である。生体機能を分子レベルで理解するために,これら生体高分子の立体構造の解明が不可欠である。解明には通常,X線の回折現象が用いられる。
この課題では,X線を用いた生体高分子の立体構造の解明を模して,可視光を物体に当てて得られる回折パターンから,物体の構造を定量的に求めることを体験する。
課題13 生体高分子の形と働き
生体を構成する分子のなかで,DNA,RNA,タンパク質,多糖といった高分子は高次構造をもち,構造変化を伴いながら特異な機能を発現する。まっすぐに伸ばすと 2m にもなるヒトの DNA は,超らせん構造を形成することによって数十μm 径の細胞内核に収まることができる。このしくみを理解するためには,らせん状分子の絡み方やねじれ方を示性値として表現し,構造の安定化を理解することが重要である。
この課題では,環状DNAとそれを切断した直鎖状DNAの分離を体験するとともに,ゴムチューブを用いて高次構造変化のモデル実験を行い,“絡み”や“ねじれ”とそれにより生じるひずみエネルギーの関係を考察する。