この理科実験講義は,東北大学の理科系学部(理,医,歯,薬,工,農学部)の1年生を対象としています.
自然科学では,“実験”や“観察”が重要な役割を担っています.不思議な現象, 今までの知識で説明できない新しい現象にめぐり合ったとき,皆さんはどのような手順で考えますか? 科学者は,始めに過去の知識をもとに問題を論理的に整理し,その新しい現象を理解するためのモデル を考えます.次に,そのモデルが正しいかどうかを検証するために,実験や観察を行います.その結果, モデルが正しければその現象は,理解できたことになります.そうでない場合は,再考してモデルを 作る所に戻ります.そして,再び実験装置や実験方法の改良を行い,実験や観察を行います. このサイクルを,その現象が理解できるまで繰り返します.高等学校までの理科教育は, 知識の獲得という側面が強調されています.大学では,自然現象を理解するための上記の試行錯誤が始まります. その学問への取り組み姿勢の移り変わりを,滑らかにしようというのが,「自然科学総合実験」の第一の目的です. さらに,現在の高等学校では,理科の科目は選択制になっています.そのため学習しない科目がでてきます. そこで,従来の物理,化学,生物,地学の内容を融合して,幅広く自然に触れる事を考えました. これが,第2の目的です.さらに,第3の目的は,科学的文章が書けるようになることです.
この目的を達成するために,5つのテーマを取り上げました.21世紀の課題である「地球・環境」, 「エネルギー」,「生命」,東北大学の得意分野である「物質」開発,そして,文化の背景にある 自然科学の法則を理解するための「科学と文化」です.
この実験講義を通して,(1)論理的思考能力,(2)継続的に新しいことに興味を持ち,挑戦する意欲と能力, (3)科学的な文章を書く力が育成されることを期待しています.
大学院理学研究科 須藤 彰三