「生命」には、2課題(3回)を設定した。
(5)生命の始まり: 線虫の受精と卵割
受精卵のダイナミックな細胞分裂の様子を観察し、体が作られていく過程を顕微鏡観察する。材料には、線虫(C. elegans)を用いる。成熟した線虫(1世代3日)は、体内に未受精卵から孵化直前までに発生の進んだ卵までをもち、1個体で発生の全過程を一度に観察できる。特に、受精後の初期の分裂(卵割)は、5~8分の間隔で進み、その間の細胞核分裂や細胞質分裂のダイナミックな変化の様子を観察することができる。さらに考察の際には、人間の受精・卵割と比較し、人間の生命の始まりに関する理解を深める。そこで、胚性幹細胞(ES細胞)、一卵性双生児、不妊治療、受精卵診断、体外受精などの概念にも触れて、その問題点についても考える。
(6)ゲノムDNAによるコメの品種の判別: DNA鑑定(2回)
毎日、親子の判定や犯罪捜査に関する新聞記事をにぎわしているDNA鑑定を行う。実験材料として、身近なコメ(コシヒカリ、ササニシキ等)を用いることによって、より理解しやすい実験として設計した。一人に一粒の米粒を渡して、粉砕し、DNAを抽出するところから始まり、PCRにかけるまでで1回、次回に電気泳動、染色と撮影、解析を行う。DNA抽出に市販キットを用いるために操作の多くがマニュアル化し、“調理実習的実験(ブラックボックス)”の部分も多いが、要点は学生自身が考えられるように工夫した。